寄生虫予防のイメージ

毎年、春先になるとノミやダニ、蚊の活動が活発になりますが、冬場でも活動は続いています。皮膚に寄生するノミやマダニが媒介する病気には、人に感染する危険なものも存在します。また、蚊はフィラリアという寄生虫を感染させる危険性があります。年間を通じて、こうした寄生虫の検査・予防を通し、様々な危険から、しっかりとペットを守っていくことが大切です。

ノミ・ダニの予防について

ノミやマダニは散歩中など、外出の際に寄生する以外にも、人が靴などに付けて外から連れてくる場合もあり、室内飼いの犬や猫でもリスクがあります。皮膚に寄生するため、かゆみなどの皮膚の障害が現れるのはもちろん、大量に寄生された時に貧血になるなど、そのほかの様々な病気を引き起こしてしまう場合があります。

たとえばノミでは、ノミの唾液成分がアレルギーを引き起こしたり、サナダムシの卵を食べたノミをグルーミングで口に入れてしまうと、サナダムシが小腸に寄生してしまうことがあります。また猫同士で感染するバルトネラ菌がノミによって媒介されることが原因の「猫ひっかき病」というものがあります。これは猫に症状は現れないのですが、人間がひっかかれたり咬まれたりすると、発熱や頭痛、リンパの腫れなどを引き起こすものです。

またマダニでは、原虫や細菌を媒介することによって、食欲不振や貧血、発熱、黄疸などの症状が現れる「犬バベシア病」、貧血や発熱などの症状が現れる「猫ヘモバルトネラ症」、人にも感染するもので、犬では神経症状や発熱、食欲不振などが現れ、人では皮膚や神経、関節などに炎症が現れる人獣共通の感染症の「ライム病」などの病気のリスクがあります。また近年、マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群/SFTS」で、人での死亡例も報告されています。

ノミ・マダニは、月に1回、予防薬を飲む、または背中につけることで予防することができます。予防薬の種類としては、以下のようなものがあります。

  • 錠剤(月1回内服)
  • スポット(月1回滴下)
  • チュアブルタイプ、タブレットタイプ(月1回もしくは3カ月に1回内服)

予防薬は、それぞれの性格や生活スタイルによって、適したものをお勧めしています。また、近年ではフィラリア症予防も同時に行える薬剤もありますので、お気軽にご相談ください。

フィラリアの予防について

フィラリアは蚊によって伝播する寄生虫で、「フィラリア症」という病気を引き起こします。心臓内や血管内に寄生し、発症すると咳や呼吸困難、血尿などの症状を引き起こし、命に関わる場合もあります。

以前はこのフィラリア症で多くの犬が命を落としていましたが、予防薬によってほぼ防げる病気であり、現在、予防薬の普及によって亡くなることは少なくなっています。近年では猫でもフィラリア症が認められるようになっており、猫でも予防することが大切です。

フィラリア症の予防薬は、飲み薬またはスポット剤になります。ただし、すでに感染してしまっている場合、予防薬を投与するとショック症状を引き起こしてしまう場合があるため、投薬前にまず、すでにフィラリア症に感染していないかどうか検査することが必要です。

予防薬は、蚊から感染したフィラリアの幼虫が、心臓にたどり着くまでに、完全に殺してしまう薬剤です。飲み薬に関しては、月1回(1カ月間隔)の内服をします。基本的に蚊の活動が活発になる春から開始し、秋になって気温が下がり、蚊が活動停止して1カ月後には休薬できます(一年中蚊の活動が活発な地域では、冬でも予防薬を飲む必要があります)。